ニュースサイト「JBpress」で2020年7月28日に配信された「BBCの英首相会見で痛感、日本メディアの情けなさ」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/61461)について書きたい。筆者は黒木亮で、紹介によれば1988年から英国に在住している作家とのことだ。大学法学部を卒業後カイロ・アメリカン大学大学院(中東研究科)に進み、その後銀行、証券会社、総合商社に23年あまり勤務して国際協調融資や航空機ファイナンスなどを手がけたという経歴を持つ。

記事は、BBCの記者が遠慮なく鋭い質問を次つぎとジョンソン英首相に突きつけ、それに首相が必死に答えている動画(https://www.youtube.com/watch?v=3rm45jiPrdw)の紹介から始まる。動画についての詳しい説明が記事にある。それを読んでから動画を見てみたが、ジョンソン首相の発言を遮りながらインタビューアが「何を間違えたか」と繰り返し尋ねると、話を自分のペースで進めようとしている首相だが、耳を真っ赤にしながら、間違いを認めつつも自分の主張を展開しているのがわかる。

このような、正面からぶつかり合う議論を今まで見たことがなかった。ジョンソンはやはり政治家で、なかなか尻尾をつかませないが、それでもはぐらかしやごまかしはなく、きちんとした論理に基づいて話をしている。インタビューアは、話が逸れそうになると、割って入って強引に話の筋を元に引き戻す。非常に印象的なインタビューだった。

黒木は、日本のマスコミがこのようなインタビューをおこなわないことに苛立ちを隠さない。

日本の政治家の記者会見やインタビューでは、政治家が訊かれたくない質問をするのは、記者クラブに属していないメディアの記者やフリーの記者だけと言っても過言ではない。記者クラブに所属している大手メディアのサラリーマン記者は、政治家のご機嫌を取り、時々、政治家からちょっとした情報をもらえれば、バッテンも付かず、結構な給料ももらえるという居心地のよい地位に安住し、真実を追求し、権力の暴走を阻止するという最も重要な役割を放棄している。

もちろん、日本のマスコミにも例外があることを黒木は実名を挙げて紹介している。だがそれらはあくまで「例外」でしかない。

とはいうものの、私はマスコミだけを責めるわけにはいかないと思っている。日本の政治家がいい加減であることは、ニュースに少し注目していればわかることだ。マスコミも質が低いが、政治家の質も目を覆いたくなるほど低い。そしてその政治家を選んでいるのは選挙民なのだから、選挙民自体のレベルが低いとしか言いようがない。つまりこれは日本の社会全体が抱える問題だということだ。