米国のインターネット音楽配信プラットフォームのパンドラ(pandora.com)についても興味深い話が紹介されている。

音楽の好みで政治的傾向を予測できるだろうか? つい先ごろパンドラの役員が、ジップコードと音楽の選択をもとにした政治的傾向についての同社の予測の精度は75〜80パーセントだと語った。これだけの精度を達成したうえで、パンドラは「選挙の候補者および政治団体が、パンドラと契約している7300万人のアクティブリスナーを対象とすることのできる」広告サービスを開始した。(47ページ)

この文章の翻訳について注文をつけておくとすれば、「予測」は「推定」あるいは「推測」とすべきであり、「ジップコード」は「郵便番号」とすべきだ。米国は住む都市によって民主党支持か共和党支持かがある程度わかる。だからこの「推定」も、郵便番号の寄与が大きいだろうと思われる。だが、そこに音楽の好みによる年齢推定や思想傾向の推定が加われば、ずっと正確性が上がるのだろう。巻末の「原注」に挙げられている元記事(https://www.wsj.com/articles/internet-radio-service-builds-profiles-of-its-audience-1392337465)は有料記事だったので読めなかったが、記事内で配信されている動画によれば、郵便番号によって居住地区で優勢な政党を調べ、その中で劣勢な政党を支持する可能性がある人にターゲットを絞るというようなこともするようだ。

動画の中でもレポーターが、音楽をシェアしたりすることで自分の情報を売り渡しているという意識を持つべきだと述べていたが、そのとおりだ。おそろしいと言えばおそろしい。

情報の訂正が逆効果になるという実験も興味深い。

何かの主張にかんして世論が分かれるとしよう。第一グループはAだと信じ、第二グループはAではないと信じている。第一グループが全面的に正しく、第二グループはまったくの愚か者だとしよう。最終的に、第一グループの成員からではなく独立した情報源から、Aを支持する真実の情報が提供されるとする。第二グループはAだと信じるようになると想定するのが理にかなっているはずだ — あなたはそう思うかもしれない。
ところがいくつかの重要な状況で正反対の自体が起きた。第二グループはAではないと信じつづけ、その信念は前より強くなった。訂正の結果、分極化が進んだのである。(125ページから126ページ)

紹介された実験のひとつはイラク戦争の正当性に関するものだ。まず参加者にはブッシュ大統領が「サダム・フセインはテロ組織に武器、物資、情報などを流すリスクがあった」とほのめかしてイラク戦争の正当性を証明したという偽の記事を見せ、その後にイラクには大量破壊兵器がなかったという実際の報告書を読ませた。それから「イラクには大量破壊兵器を製造する能力や兵器の備蓄があった」という文に同意するかどうかを質問したのだが、リベラルな参加者は不賛成が強まった。これは有意な変化ではなく、もともとこのグループはイラク戦争の正当性に疑問を持っている。

しかし自分は保守的だと申告した参加者では、この記述に〝同意〟する方向に統計的に有意な変化を見せた。「つまり、訂正が裏目に出たのだ — イラクには大量破壊兵器がなかったことを知らせる訂正を受けた保守派は対照群よりも、イラクは大量破壊兵器を保有していたと信じる可能性が高かったのである」。(126ページ)

訂正は誤信念を正すどころかかえって強化し、分極化を促進したということになる。