医療ポータルサイト「m3」で2020年6月10日と11日に配信されたスウェーデンのカロリンスカ大学病院泌尿器外科の医師である宮川絢子へのインタビューについて書きたい。第1回は「日本人医師が見たスウェーデンの新型コロナ対策」(https://www.m3.com/news/iryoishin/783678)、第2回は「スウェーデンで高齢者の死亡者数が増えた背景」(https://www.m3.com/news/iryoishin/783679)である。

スウェーデンは欧州では唯一ロックダウンをせず、学校も休校にしないなど、国民の社会活動を制限しない方策をとった。その一方で感染者数、死亡者数は多い。

それでも、基本的には専門家や政治家への信頼度は非常に高いですね。死者数が4000人を超える前は公衆衛生庁に対して約8割が支持をしており、4000人を超えても7割ぐらいはありました。政権与党への支持率も高まっています。
ただ、ICUが満床になったことはなく、それは事前準備の成果ではありますが、もっと高齢者を受け入れられたはずだという批判があります。死者数が伸びたことで批判は増えています。ロックダウンをすべきという専門家グループもいます。

この背景にはスウェーデン政府が透明性を重視し、国民の信頼を勝ち得てきたということもあるだろうが、スウェーデン人の国民性もあるだろう。この期間中、偶然に宮川の77歳になる義父が脳出血を発症したというが、医師の判断で治療はしないと決められた。

発症以前の健康状態を知らない脳外科医が、初診医からの電話一本による説明で、「余病があるため健康状態は80歳以上」と判断し、手術の適応なしと決定されてしまいました。その判断は間違っていると抗議しましたが、義父は治療を受けることもなく、そのままこの世を去りました。こういった治療の線引きは、スウェーデンでは普段から行われていることで、運の悪い場合には、助かる命が失われることもあるのかもしれません。

日本人からすると一見残酷なように思えるかもしれないが、スウェーデンではこれが当たり前で、80歳以上の高齢者をICUに収容して挿管して治療するなどということはしない。逆に高齢者に濃厚な治療をするほうが残酷という考え方がある。