15世紀から16世紀にかけ、ヨーロッパ諸国は世界に船や軍隊を出し、アフリカやアメリカを占領していった。その力は圧倒的で、どの土地の先住民もかなわなかった。それを、ヨーロッパの文明が進んでいたからであり、文明が進んだのはヨーロッパ人が優秀だったからだと考える人びとがいる。この本は、それが大きな間違いであることを証明しようとしている。

著者によれば、各大陸で文明の発達に大きな差が生じたことには、大陸の地形が大きく影響している。具体的には、大陸の広さと、広がりの方向が重要だ。人間が文明を築くには、食べ物が充分に得られなければならない。食糧生産に従事しない人びとがいなければ、学者や軍人といった人びとが生まれないからだ。食べ物を充分に得るのは狩猟採取では無理で、栽培農業の導入と動物の家畜化が必要になる。

大陸が広いと、それだけ多種多様な植物や動物が存在する可能性が増す。広い大陸に住んでいるほうが、栽培可能な野生種の植物や、家畜化可能な動物に巡り会いやすい。

著者は遺伝学を使って、現在地球上で栽培されている作物や家畜化された動物の野生種が本来どこに分布していたのかをまとめている。
地域動植物検証されている
最古の年代
植物動物
1.南西アジア小麦、エンドウ、オリーブ羊、山羊紀元前8500年
2.中国コメ、雑穀(アワ・コーリャン)豚、蚕紀元前7500年までには
3.中央アメリカトウモロコシ、インゲンマメ、カボチャ類七面鳥紀元前3500年までには
4.アンデスおよび
アマゾン川流域
ジャガイモ、キャッサバラマ、テンジクネズミ紀元前3500年までには
5.アメリカ合衆国東部ヒマワリ、アカザ紀元前2500年

「表5-1 飼育栽培化された動植物の例(177ページ)」より抜粋
ここから、現在の重要作物である小麦とコメがユーラシア大陸原産だとわかる。緯度が同じだと気候も似ていることが多いため、植物の移植は容易になる。そのため、東西に広がったユーラシア大陸では栽培化された植物が拡散しやすく、農業が発達しやすかった。それに対し、南北に長いアフリカ大陸ではサハラ砂漠に遮られて農作物が拡散できなかったし、同様に南北に長いアメリカ大陸は、パナマ地峡やジャングルに遮られて農作物が拡散できなかった。

動物についても同様なことが言える。馬や牛を家畜化することで農耕作業は格段に効率化したし、家畜はタンパク源としても大いに貢献した。ただし、家畜化については偶然の要素も大きい。アメリカ大陸には大型の動物がいなかった。1万3000年前に絶滅したのだ。また、アフリカ大陸には現在でも多くの哺乳類がいるが、家畜化に向かない危険な動物ばかりだ。