現在、病医院を受診する患者が減少している。まだ今のところ大きな騒ぎになっていないが、テナントとして入居している開業医の中にはテナント料や機器のリース料を払えなくなる者も出てくると思う。病院も倒産するところが出るだろう。

受診者が減っているという記事に対するコメントには、不要な診療で不当に金を取っていたのだろうなどという発言も混じっている。以前から医師を信頼しない人びと、さらには医師に悪意を抱いている人びとが一定程度いたので、このような発言を読んでも驚かないが、一般の人びとにまで医者を受診する必要は少ないという考えが広まれば、受診者が少ない傾向は定着することになる。

私自身は、日本人は医療に頼りすぎると考えているので、医者にかからない傾向を悪いとは思わない。だが、それは自分でしっかりと健康管理をし、万が一の場合や自分の最期についてきちんと考えておくことが前提となる。健康管理をせず、慢性疾患を放置した上で医師にかかったのでは、医療費もかさむし、何より患者本人の苦しみが増加する。

風邪を引いたぐらいで医者にかかる必要はない。だが、「風邪は万病のもと」という言葉があるように、「たかが風邪」と思っていたら別の病気だったということがあるかもしれない。その覚悟のもとで風邪を放置してほしい。インフルエンザも放置すれば治る。発熱したほうが早く治るというデータもあるので、解熱剤なども飲まなくて良い。ただし、肺炎、脳炎などにかかって後遺症が残る人や死亡する人もまれにはいる。だがそれはワクチンを打っても、薬を飲んでも、それにもかかわらず起こりうることなのだ。病気とはもちろんそれなりに危険なものだ。

話を元に戻そう。病医院の受診者が減少すると、当然医院の閉鎖や病院の倒産が起きる。社会というものは微妙なバランスの上に成り立っているので、このことが医療をめぐる環境を一変させる可能性がある。

たとえば、有名病院の中には給料が安く、アルバイトをさせることで医者の生計を成り立たせているところがある。有名な病院だとそれでも特に若手の医者が集まるのだ。だが現在、受診者数が減少したことで「アルバイト切り」をしている病院が多い。アルバイトができなくなると、その病院の給料だけで家族を養わなければならなくなり、場合によってはより給料の高いところを探さねばならなくなる。ところが今は経営の苦しい病院が多く、そんなに簡単に転職を受け入れてくれない。

このような状況がいつまで続くのかはわからない。私は社会免疫ができるまで、すなわち人口の6割から7割、日本人6千万人ほどが感染しないと終息しないのではないかと考えているので、少なくともあと2年は続くだろうと思っている。もしそうなれば、日本の医療供給体制そのものが大きく縮小せざるをえないと予想する。医療者を目指す人も減る可能性がある。それでよしとするなら、医療を限定的にしか受けられない世界を甘受する覚悟が必要だ。一方、それではいけないと思うなら、それ相応のコストを覚悟しなければならない。