最近、公園のような植物のある環境が人間に与える影響を調査した記事を続けて目にした。2019年8月20日に「日経メディカル」で配信された大西淳子「都市の緑化では木陰を作る樹木が良い?」(https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/jama/201908/561967.html)と、翌21日に「MIT Technology Review」のニューズラインで配信された「緑いっぱいの公園で人は幸せに、ツイッター分析で新判明」(https://www.technologyreview.jp/nl/twitter-got-you-down-try-taking-your-phone-out-for-fresh-air/)だ。

大西の記事は、「JAMA Network Open」誌電子版2019年7月26日号に掲載された論文を紹介したもので、原論文はオーストラリアでの調査報告だ。

植物が人間の精神や全般的健康に良い影響を与え、抑うつを減少させる可能性があることがわかっているが、緑の種類によって効果が違うかどうかを見た研究だ。シドニーなど都市の住民46,786名(平均61.0歳、半数が女性)について2006年初めから3年間健康データを収集し、2012年から3年間追跡調査をおこなった。このデータと居住地周囲1.6km以内の植物調査データの相関を調べた。植物は樹冠を持った高木、草、低い灌木に分類している。

共変数を補正すると、追跡期間中に心理的苦痛が高い状態が発生するリスクは、居住地周辺の緑地面積が0~4%の場合に比べ、30%以上で半分以下(0.46倍)となった。樹冠の面積が30%以上を占める地域は0~9%の地域と比較しリスクが3分の2(0.69倍)だった。初期から心理的苦痛が高かった人の有病率については、樹冠が30%以上ではリスクが0.61倍だった。芝生と低い灌木はどちらも、有病率、発生率に対して影響がなかったが、芝生が30%以上の場合には、心理的苦痛が高かった人で有病率が上昇することが示唆された(1.71倍)。

これらの結果から著者らは、都市の緑化対策は木陰を作る樹木をメインとして増やすことがより良い選択と考えられると結論している。

二番目の論文は、サンフランシスコの公園から発信されたツィートをその前後のツィートと比較したのもだ。それによれば公園内からのツィートにはポジティブな語が多く使われ、否定表現が減る。公園にいる人は幸福度が上昇していると推定される。

人間が自然の中にいるときのツイートには幸福度の上昇が測定されているが、シュワルツによると、それが因果関係によるものなのか、相関関係によるものなのかは確信できないという。つまり、人々が外に出て自然に囲まれていることが理由で幸せな気分になっているのか、それとも人々が公園内で野外コンサートを見たり、友人と会ってピクニックをしたり、犬と散歩をしたりするなど楽しい気分になる活動をしているだけなのかはわからないということだ。

いずれにしても、緑が人間に役立つことは間違いないようだ。だが、砂漠で暮らす人びとはどうなのだろう。緑の少ない環境でそのような人びとがどのように影響を受けているのか知りたい。