降板を決めた執筆者は他にもいた。まつむらの記事から引用する。

以前、十河 進さんが連載を辞められた2014年6月13日の記事。
映画と夜と音楽と...[635]最終回 虐げられた者たちの決意
これを受けて、2週間後のわたしの記事の近況欄で、次のように書いた。
“十河さんがデジクリのレギュラーを降りられた。実は僕自身、十河さんと同じ理由でこの一年以上、連載から降りようと何度も思ってきた。編集長の主義主張は別に個人の意見だから構わないが、偏見や嘲笑うような表現は人を不愉快にさせる。また、本文と編集後記というステージの違いもずるい。十河さんが降りたことで、この数週間散々考えたが、一つだけ続ける理由が見つかったので、もう少し続けてみることにします。”

ただし、十河進(そごう・すすむ)2019年1月9日から「日々の泡」というタイトルで映画を中心とした記事の連載を再開している(http://bn.dgcr.com/archives/20190109110300.html)。第1回のテーマがカーソン・マッカラーズと『心は孤独な狩人』だったので記憶に残っていたが、この記事も最後までは読んでいなかった。

まつむらは、多忙でしばらく「デジクリ」を読んでいなかったと書いているが、それでも5年越しの絶縁ということになる。十河が復帰した顛末は自分の記事で簡単に触れているが、自分自身の心の動きについては書かれていない。

実は、まつむらが降板した号の編集後記で、柴田は次のように謝罪している。

●まつむらさんへ 筆者のみなさんへ 読者のみなさんへ
まつむらさん、ご意見ありがとうございます。たしかにその通りでしたと冷静に素直に受け止めています。まつむらさんをはじめ多くの人を不愉快にさせたこと、不愉快にさせ続けていること、たしかにおっしゃる通りです。謹んでおわびいたします。
すべてわたしの不徳、教養のなさ、ゴーマン、底意地の悪さ、悪趣味が引き起こしたものです。編集後記欄を利用して、好き勝手に自分の趣味である「偏った思想」を露出してきたことを自覚しています。これを機に、この悪い趣味はやめにします。じつは前にも一度こういう事態を招いたのに、まったく懲りない男です……。

そして、最後を「※この度のまつむらさんのテキストには一切、手を加えていません」という一文で締めくくっている。だが、2019年07月23日No.4834(http://bn.dgcr.com/archives/20190723110000.html)の編集後記では富士山噴火や東南海巨大地震を扱った本を紹介しており、彼の趣味が修正されたとは思えない。

経過説明はこれくらいにして、次には私の考えを述べたい。