e-ラーニングコース「gacco」の講座「教養としての言語論:言語は私たちをまやかし生きにくくさせる」(https://lms.gacco.org/courses/course-v1:gacco+ga125+2019_02/about)*を受講した。講師は立命館大学教授の山中司である。
2019年5月2日(木)23時59分に閉講され、閉講以降はこのURLが無効となる場合がある。字幕と動画のダウンロードが可能であるので、引用は字幕からおこなう。ただし、字幕は改行が多く読みにくいため、改行を適宜削除し、必要に応じて最小限の句読点を追加した。

この講座のメインテーマは、副題に示されているように、言語を重視する立場に対抗する見方の提示である。彼は書き言葉を重視する西欧流の文化に疑問を呈し、さらに言葉が人間を特徴付けるもっとも重要な属性だとする考え方に挑戦して、「言語は時として私たちの生き方や考え方を窮屈にさせてはいないでしょうか」と問いかける。

受講生を刺激するための挑戦的な物言いや、極端な断言も見られるが、総じて彼が真剣に言語哲学に取り組んでいることがわかる講座だった。ディスカッションの場も設けられており、かなり盛り上がっていた。ほぼすべての発言に対して山中がコメントしており、そのコメントも早いものでは10分ほどで付いている。彼の熱意が感じられた。

彼はこの講座で、日本人が流暢な英語を話すことを熱望することの不自然さ、無意味さを力説している。

日本人がネイティブ・スピーカー・オブ・イングリッシュ、つまり、英語の母語話者も聞いて驚くような、ネイティブと全く代わり映えのしない、いわゆる完璧な英語で話すことは「間違っています」。(Week2:正しい言語が良い生活? 2-3.ランゲージ・アティテュード)

この発言に意を強くした受講者は多いようで、ディスカッションでも「ずいぶん勇気をもらいました」「これからはもっと肩の力を抜いて英語に取り組んでみようと思いました」などの感謝の言葉が述べられていた。

いくら学んでも使えるようにならない英語教育の改革を「大学で英語を教えていらっしゃる先生の立場から」どのように考えているのかという質問に対する山中の答えが面白かった。

日本人が英語ができるようにする一番簡単な方法は、英語を必修から外すことです。外した途端、日本人は英語ができるようになると思います(逆説的ですがその通りではないでしょうか)。もちろん全くできない人も増えるでしょうが、やろうと思った人はかなりのレベルまで持っていけると思います。

たしかにレベルは上がるだろう。平均値は下がるかもしれないが、モード(最頻値、いちばん人数が多い区分)は(英語がまったくできない人の区分を除けば)上がることになると思う。