國頭は患者と話をする際に、基本的には看護師が同席するほうが良いと考えている。だが、彼は日本ではまだまだチーム医療が浸透しておらず、主治医がすべてといった風潮が強いと言う。

内富先生たちが、国立がん研究センター東病院で外来患者さんからとったアンケート結果があります。それによると、そういう[引用者注:深刻な]面談の際に、他の医療者(主治医以外の医師や看護師など)を同席させることを望むかとの問いに、「望む」が35.2%、「望まない」が64.8%だったそうです。(011ページ)

國頭は「この結果を見て、東病院の看護師さんはみんなガッカリしちゃったそうです」と述べているが、ひとつには外来患者へのアンケートだったために、病棟の担当看護師の有り難みを知らない患者や忘れてしまった患者がいたのだろうと思う。もうひとつにはがん研究センターの風土があるだろう。がん研究センターの医師には休日も回診する医師が多いようだ。以前のこのブログで患者の体験記(関原健夫『がん六回、人生全快〈復刻版〉』)を取り上げたときに述べたことだが、それは患者とのコミュニケーションを維持し向上させる上で非常に効果的であり、社会的にみても賞賛されるべきことなのだろうが、医師自身のQOLやチーム医療の推進という観点からすると、それらを推進するものではない。休日にかならず回診するなら、家族と行楽に出かけることは難しくなるし、かならず主治医が顔を出すなら、チームの他の医師の影が薄くなる。「主治医がすべて」という風潮を変えようと思えば、主治医側からの積極的な働きかけも必要である。

また、「基本的にはこういう面談に看護師さんも同席した方が望ましいのは間違いない(017ページ)」と言いつつも、よくわかっていない看護師の場合、面談の途中でPHSに出て雰囲気を壊してしまうことがあると苦言を呈する。

こういう時、私は「悪いけど出て行ってくれないか」と頼みます。そして面談の後でナースステーションに戻り、「ふざけるなバカ野郎」と怒鳴ったりすることもあります。顰蹙を買いますが、私が悪いんですか(苦笑)?(017ページ)

彼の気持ちはよくわかる。

彼はベッドサイドで話をするときも、座ることが大切だと言う。「立ち話だと。いつこの医者はすっといなくなるかと、相手は、気が気でなくなる」ので、「座って話すということは、私はしばらく、あなたのために時間を割くつもりである、簡単には席を立たないという意思表示になる」のだ。ベッドの脇にしゃがむのもダメで、「どうしてもなければ、患者に断ったうえで、ベッドに腰を掛けろ」という、SPIKESモデル(悪い知らせを伝える際の6つの手順)の提唱者であるトロント大学のロバート・バックマンの言葉を紹介している(006ページ)。私も実践していることだが(たとえば事務職と話をする場合でも、立ったまま要件を言うのではなく、手近な椅子に座った方が良い)、非常に重要なことだ。相手を立たせたままで話すのも、自分が立ったままで話すのも、避けたほうが良い場合が多い。