どの社会にも、不当なことをして金を得ようとする人びとがいるのは変わらない。ただ、米国ではそれがかなり露骨におこなわれているように思える。

依存症患者は、オピオイド系鎮痛剤を手に入れるため、「ピルミル(pill mills)」と呼ばれる、オキシコドンなどの強い鎮痛薬を不正かつ大量に処方する悪質なペインクリニックに足を向けるようになります。392人しか住民のいないウェストバージニア州のある街の1件の薬局に、2年間で900万個以上ものオピオイド鎮痛薬が出荷されていたこともあったのです。[引用者注:たとえば以下の記事:https://www.npr.org/2016/12/22/506550248/drug-firms-make-millions-by-sending-opioid-pills-to-w-va-report-says]
この悲惨な状況は、さらに悪化の一途をたどります。信じがたいことに、製薬会社は連邦議会に圧力をかけ、2016年4月、医師、診療所、薬局に法外な量の薬剤が出荷されたとしても、DEAがそのことを積極的に調査することができなくなる「S. 483 (114th)」という法律まで成立させてしまったのです。

この法律の主唱者はトム・マリノ共和党下院議員(ペンシルバニア州)だそうだが、製薬業界から約10万ドルという多額の献金を受けている。このマリノ議員をトランプ大統領が麻薬取締政策局局長に指名したというのだから、お笑い種だ(結局マリノは辞退した。https://www.theguardian.com/us-news/2017/oct/17/trump-pick-for-drug-czar-tom-marino-withdraws)。2014年から2016年の2年間で、製薬業界はロビー活動、広告キャンペーンなどのため総額1億200万ドルを費やしているという。

さらに驚くことに、「S. 483(114th)」の成立後、最低でも56人のDEA元幹部や弁護士らが製薬産業側に転職したことがわかっています。彼らはDEAの弱点を知り尽くしており、どうやればDEAの調査を免れるのか十分把握しています。こうしてDEAは、本来は厳正に執行されるべき違法な薬物を取り締まる「権力」を失いました。

米国では現在「約133人に1人が依存症ではないかと言われて」いるそうだ。「少量で死に至る毒性の強いフェンタニルをヘロインに混ぜて使用する人が後を絶たないほど増え」、2017年には「6万4000人以上が薬物過剰摂取が原因で死亡」したという。

しかも死亡者は依然として増加しており、ピッツバーグ大学の研究者らは、今後5年間で30万人に及ぶ米国人が薬物の過剰投与で死亡するのではないか、とまで推定しています。
【Opioid epidemic shares chilling similarities with the past, AP NEWS, Oct 28,2017】[引用者注:https://www.apnews.com/dc926eb0cf114067a35d303c9b18a9cf/Opioid-epidemic-shares-chilling-similarities-with-the-past]

米国社会の闇は銃よりもオピオイドのほうが深いかもしれない。このような記事を読むと、日本の安倍政権の身内びいき・友人優遇政策も可愛いものに思えてしまう。