ロスリングは、世界を所得階層で分けるなら4つに分けるのが正解だという。ひとりあたり1日の所得が2ドルまでをレベル1、2ドルを超え8ドルまでをレベル2、8ドルを超え32ドルまでをレベル3、32ドルを超えた階層をレベル4としている。区切りが対数(累乗)になっているのには意味がある。レベル1に属するのは10億人、レベル2は30億人、レベル3は20億人、レベル4は10億人だ。世界の人口の半分がレベル2にいることがわかる。各レベルをロスリングは出世ゲームで説明する。
レベル1のスタートは1日1ドルから。5人の子供が、一家にひとつしかないプラスチックのバケツを抱え、裸足で数時間かけて歩き、ぬかるみに溜まった泥水を汲んでくる。帰り道で拾った薪で火を焚き、泥混じりのポリッジ(粥)を調理する。生まれてこのかた、口にしたことがあるのはこの粥だけ。土地は痩せ細り、不作の月にはお腹を空かせて床に就く。
レベル2に上がると少しの食料を買うことができ、靴や自転車も買える。電気も通り初め、冷蔵庫などはないのだが、停電がなければ電球の光で子どもたちは日が沈んでからも勉強することができる。このレベルに世界の半数がいるのだ。レベル1の暮らしは辛く、命を落とすことも多い。またレベル2に上がることも難しい。レベル1にいるのは内戦などの政情不安定が理由であることが多いからだ。
レベル3では水道が引かれる。電力も安定し、冷蔵庫が購入できる。バイクも買える。
そんなある日、通勤中にバイク事故に遭い、子供の教育費を前借りして医療費を支払うことに。治療の末、なんとか復帰。貯金が残っていたので、レベル2に逆戻りしなくてすむ。やがて子供2人が高校に入学。高校さえ出てくれれば、自分には手の届かなかった仕事に就かせてやれる。
レベル4は現在の日本のような暮らしだ。
この4つの所得レベルというシンプルな考え方こそが、「事実にもとづく世界の見方」を支える、ひとつめにして最も重要な柱だ。本を読み進めていけばわかるが、この4つのレベルを使うだけで、テロから性教育まで、世界についてさまざまなことを理解できるようになる。
日本から見ればレベル1から3のすべてが「低所得」に見えるかもしれないが、実態はさまざまであり、レベル1の貧困は10億人だけ(10億人もいる)ということを私たちは知らねばならない。