本の最後は、いわゆる「万引きGメン」である伊東ゆうとの対談になっている。万引き犯は店舗に入って同じような動きをするという。
だいたい同じルートを通って、だいたい同じ場所で盗る。情報を共有しているわけでもないのに不思議なことです。(248ページ)
人間の本能の共通性なのだろうか。このような場合、万引き犯のルートや窃盗場所はAIを使って割り出せる可能性が高い。行動科学の対象としての興味を感じる。
万引き犯を捕まえた場合、店舗側の負担は大きい。警察との対応で、短くても数時間をとられるからだ。そこで伊東は「切符制度」を提案している。
伊東 道路交通法違反でいう「切符を切られる」ってやつですよ。万引きで捕捉されるたびに盗んだものの額面や品物、犯行時の場所などを記載し、「万引きしました」という明確な自供があれば切符を切って帰らせ、その記録は警察に送ります。一定の額を超えた、買い取りできない、ガラウケ[身柄を引き受ける人]がいない、捕捉のときに暴れた、外国人であるという場合は、通報して、これまで通り司法に預ける。(257ページ)
これはGメンの発想だが、ある程度有効だろう。だが、本来は裁判で治療を言い渡すことができるようにすべきだ。外国では、性犯罪や依存症などは一般の犯罪と別に裁かれる制度を採用している場合がある。その制度がかならずしもうまくいっているとはかぎらないのだが、日本の制度はあまりに硬直している。性犯罪も一種の依存症とみなすことができる。依存症に必要なのは治療である。斉藤が繰り返し述べているように、犯人を刑務所に入れても依存症は治癒しない。