阿部和也の人生のまとめブログ

私(阿部和也)がこれまで学んだとこ、考えたことなどをまとめていきます。読んだ本や記事をきっかけにしていることが多いのですが、読書日記ではありません。

2017年01月

この本の中で岡田は音楽と言語の関係について繰り返し強調している。この本の構成自体が音楽と言語の関係を軸に展開されている。彼は、この世に実在するのは「音」だけだと指摘する。それを「音楽」として聞くということは、聞き手の文化、認知、理解などが音を紡いで聞き手の脳の中に音楽を作り出しているというわけだ。

したがって、音楽を聞くときに自分の理解や解釈に自覚的になることで、自分を知ることもできるし、音楽を聞く能力も高めることができる。音楽は言語と同じで、聞き取るには能力を必要とし、能力が高まると音楽をより深く聴き取れるようになると岡田は主張する。このような考え方に対して、私はずっと反発心を抱いてきたのだが、この本を読んで、私の反発心にこれといった根拠がないことに気付き、考えを変えることとした。

だが、「彼のショパンはショパンらしくない」といった批判を聞くと心がざわつくことは変わらない。基本的に、音楽は聞いて何かが伝わってくればそれで良い。自分が面白いと思った音楽を別の基準から批判されることは好きになれない。

岡田はボルネオの密林の中で聞いたカエルの合唱がすばらしかったという。

地元の人の案内で森に入ったのはいいが、凄まじいスコールが降ったせいで足止めを喰らい、帰路についた頃にはもうすっかりあたりは暗くなっていた。漆黒の闇の中で手探りするようにして夜道を歩いていると、いたるところから生き物の「声」が響いてくる。カエル、昆虫、鳥—森全体が響きで満ち満ちている。[中略]ふと足を止めてそれらに聴き入っていた私に、ガイドの人がにやりと笑って誇らしげに言った。This is our orchestra!(125ページから126ページ)

誰もカエルや虫の鳴き声を評価したり批評したりしない。音楽とは本質的にそのようなものだと思いたいのだ。

岡田暁生『音楽の聴き方—聴く型と趣味を語る言葉』(中公新書)を読了した。著者は京都大学教授で音楽学を専攻しており、この本で第19回吉田秀和賞を受賞したとのことだ。音楽に関する解説書がこんなに面白く、また深いものだとは思いもしなかった。食わず嫌いの世界に入ったら、大きな学びがあった。さすがに音楽を研究する学者だけあると感心した。

私は西洋音楽が時代によって変わっていったことを知っている。学校で習ったクラシック音楽に関する知識もあれば、実際に体験した現代音楽やロックの変遷もある。楽典を勉強したこともあり、合唱部に入っていたこともある。だが、音楽に関する解説を面白いと思ったことがなかった。ラジオのクラシック音楽の番組は退屈だった。音楽に関する本は読もうとも思わなかった。

それが、この本を読んで、新しい視点を提供された。私は今まで、なぜ音楽が変わったのか、そこにはどのような社会的背景があり、どのような意識変化があったのかについて、学んだことも考えたこともなかった。しかし、音楽は人間のコミュニケーション活動のひとつであり、言語と同様に社会を構築するための要素なのだ。とくに古代ではそうであっただろう。音楽が変わっていくにはそれなりの社会的な圧力が必要だ。この本は、そういった「音楽社会学」的な見方を私に教えてくれた。

この本を読んだからといって、急にクラシックに目覚めたり、音楽関係の書籍に興味を覚えたりするわけではない。しかし、今までただ単に好き嫌いや漠然とした面白さで接していた音楽を社会現象の一部として捉え、そこに人間のどのような営為が込められているのかを考えるようになった。つまり、クラシックを聴いて面白くないと思ったときに、なぜ面白くないと感じたのか、分析してみようと思うようになったのだ。

この本が私の世界を広げてくれたことは間違いない。

裴は会議を「拡散系」と「収束系」に分類するが、この考え方も会議の効率的運営の役に立つ。

ブレーンストーミング(アイデア出し)などの拡散系会議なら、「提案が10個出れば会議を閉会する」などと最初に確認し、参加者がゴールを見据えながらアイデアを発表しやすい場をつくることが大切だ。
収束系会議の場合は、議題を設定するときに議長が「最後には絶対に結論を一つに絞りますよ」と宣言するのが肝心になる。(102ページ)

会議のメンバーには議論を拡散させようとする者が必ずおり、それにはしっかり釘を刺すことが重要だと指摘する。普段無意識にしてきたことだが、このように整理してもらうことですっきりした。

会議でいかに眠らせないかという工夫もいろいろ述べられている。その中に立って議論するというのがあった。これは他の機会にも聞いたことがあった。

私が経営再建に携わっている医療機関では、短い会議を立って行うことがある。これだと絶対に眠れない。長時間の場合は難しいが、30分以内なら立ちながらの議論は可能だ。眠気防止だけでなく、疲れないように皆必死に時間内で結論を出そうとするので、収束系会議にはぴったりである。(106ページ)

自分に関係のある会議は眠くならない。プレゼンテーションも同じだ。学会発表を聞いていても、興味のない話題だと眠くなるが、自分の部下のたどたどしい発表を聞いているときなど、絶対に眠くならない。会議やプレゼンテーションの内容にどうやって興味を持ってもらうかがポイントなのだろう。

長時間座り続けることは健康に良くない。30分ごとに軽い運動をすると血糖コントロールに良い効果があるという論文もある。立って会議をすれば問題ないのだが、座って会議をする場合も30分で切り上げるほうが体に良い。

裴英洙(はい・えいしゅ)『医療職が部下を持ったら読む本』(日経BP社)を読了した。裴は医学部を卒業して外科医、病理医としての修練を積んだ後に医療コンサルタントになったという経歴の持ち主である。

この本は小説仕立ての物語のところどころに著者の解説文が挿入されるという形式を採っている。題名からわかるように、新人の管理職を対象としたもので、内容は基本的なことばかりだが、逆に基本的な部分はもれなくカバーしており、知識の整理に役立った。

彼をコンサルタントとして病院に招くと、おそらく最初に質問されることが「病院としてどのように社会に貢献したいのか、また、どのような病院を目指すのか」ということだろう。グリーヴァーが『デザインの伝え方』で強調していたのと同じことだが、裴が引用するドラッカーの言葉を借りれば「ミッション、ビジョン、バリュー」である。

経営学者ピーター・ドラッカーの言葉に「ミッション、ビジョン、バリュー以外はすべてアウトソースできる」というものがある。ミッションは「社会的使命」、ビジョンは「目指す将来像」、バリューは「価値観・行動指針」などと訳され、組織のあり方の根幹を成す要素だ。このドラッカーの言葉は「ミッション、ビジョン、バリューの三つだけは内部で作らなければならない」ということを表している。(55ページ)

この言葉は病院、会社、NPOなどの組織について述べた言葉であろうが、実際には組織内のグループ、たとえば委員会などにも当てはまるものだと思うし、個人に当てはめることすらできると思う。私について言えば、私のミッションは医療を通じて社会に貢献することだったのだが、最近は知識の整理と伝達という面でも貢献したいと考えるようになった。医療事故について言えば、対応担当部門が明確なミッション、ビジョン、バリューを持つことが、患者とのすれちがいを避ける最良の方策だろう。

著者がデザインの持つ意味について開眼させられた興味深いエピソードが紹介されている。彼は大学在学中からデザインの仕事をしていたので、卒業後の就職面接でも自信満々だった。最終の四次面接で面接官の副社長から「私が新しいプロジェクトを始めて、あなたに発注しようかと検討しているとします。あなたなら最初に何を尋ねますか?」と訊かれたときも「印刷物ですかウェブサイトですか? カラーは使いますか? それとも白黒ですか?……」などとスラスラと答えた。

「それでは困りますね。そんなことは問題ではありません、一番最初に尋ねるべきは『何を伝えたいのか』でしょう」というのが副社長の答えでした。
これには参りました。沈黙です。無知をさらけ出してしまいました。(4ページ)

この副社長はスグレモノである。こんな副社長の下で働くことができたら、きっと大きく成長するだろう。

会議の円滑進行の要素としては人付き合いも非常に重要だ。多くの人と仲良くなることで、S会議の進行は円滑になる。この本では、そのために守るべきことや推奨されることが数多く紹介されている。何よりも誠実であることが重要なのだが、明るいこと、ユーモアのセンスを持つこともプラスに働く。

著者自身もユーモアに溢れた人である。営業もプレゼンテーションも、彼ならば成功するだろうと感じる。この本の各所に彼のユーモアが散りばめられているが、「まえがき」からユーモア全開だ。謝辞はこのような一節で始まる。

まずは「言わずと知れたこと」から片づけてしまいましょう。謝辞を書くなら「家族に感謝」も忘れないでくれるとうれしいな、と妻に言われているものですから。5人の子供たちも含めて個性派ぞろいの私の家族は、この本を執筆中、しじゅう睡眠不足の私に対して寛大にも家事育児を一切合切免除してくれました。ただし書き終えた今は、「シャワーを浴びる間だけでもチビを抱っこしててくんない?」という声が。もちろん喜んで。謝辞を書いたらすぐ行くよ。(xiiiページ「まえがき」)

巻末の著者紹介でも茶目っ気を出している。彼の天賦の才なのだろう。

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