会社を経営する立場にあれば、誰しもその会社が育んできた理念や価値観などを見直し、全社員で共有しようと思うだろう。病院の場合も、病院機能評価などでは病院の理念や運営目標が全職員に周知されているかどうかが問われる。しかし、言葉として覚えることは容易でも、それでは理念が「浸透」したことにはならない。
いくら高邁な理念を掲げても、それが他人事であっては意味がない。私の勤務先でも、「ビジョン研修」と称して理事長が年1回話をする。いわゆる「ストーリーモード」で話すので、聴き心地は良いが、ビジョンが共有され浸透するかと問われれば、はなはだ心もとない。それがこの本にもあるように多くの組織の現状なのだ。
私は臨床研修指導医向けの講習会に、毎年スタッフとして参加している。岩田健太郎が批判する「富士研」スタイルの研修だが、参加者が理念を共有するようにさまざまな工夫がなされている。スモールグループディスカッションを中心としたワークショップなので、話し合う機会が多い。くつろいだ雰囲気ながら真剣に話し合うので、まさにこの本に述べられている「対話」が行なわれている。
著者らは対話を活用する上での注意点をあげている。
講習会はホテルを借りて泊まりがけで行なわれる。現場から離れ、非日常的な空間を体験することで、受講者にショックを与えて活動性を高めようとしているのだ。それはそれで効果的なのだが、講習会を終わり日常に帰ったときにすべてが元に戻ってしまう可能性もある。講習会での体験を振り返る機会を持つように、最後の挨拶の際に述べるようにしよう。
以前、リクルートワークス研究所の雑誌『Works』編集長の高津尚志さんは、理念浸透の難しさについて、
「会社としては、社員一人ひとりに理念を浸透させたいと言ってますが、社員の立場に立てば、誰も自分に理念が浸透して欲しいなんて思ってないんですよ」
とおっしゃっていました。
たしかにその通りです。「理念が浸透する」ということは、今までの価値観を改め、新たな行動規範を学習し、行動を変えるということ。それを他人に強制されることは、どこかで不快感が伴いますし、簡単に実施できることではありません。(029ページ)
いくら高邁な理念を掲げても、それが他人事であっては意味がない。私の勤務先でも、「ビジョン研修」と称して理事長が年1回話をする。いわゆる「ストーリーモード」で話すので、聴き心地は良いが、ビジョンが共有され浸透するかと問われれば、はなはだ心もとない。それがこの本にもあるように多くの組織の現状なのだ。
私は臨床研修指導医向けの講習会に、毎年スタッフとして参加している。岩田健太郎が批判する「富士研」スタイルの研修だが、参加者が理念を共有するようにさまざまな工夫がなされている。スモールグループディスカッションを中心としたワークショップなので、話し合う機会が多い。くつろいだ雰囲気ながら真剣に話し合うので、まさにこの本に述べられている「対話」が行なわれている。
著者らは対話を活用する上での注意点をあげている。
[考慮しなければならないポイント]は、「対話」を実践に結び付けていこうとする意識です。この意識がないと、「対話」自体が盛り上がったとしても、それが組織の変革に結び付かないという事態を招きかねません。(169ページから170ページ)
講習会はホテルを借りて泊まりがけで行なわれる。現場から離れ、非日常的な空間を体験することで、受講者にショックを与えて活動性を高めようとしているのだ。それはそれで効果的なのだが、講習会を終わり日常に帰ったときにすべてが元に戻ってしまう可能性もある。講習会での体験を振り返る機会を持つように、最後の挨拶の際に述べるようにしよう。