日本の場合、江戸時代は医師が薬の調合もおこなっていた。医師に支払うのは診察代ではなく「薬代」であった。これが分けられたのは、1874年に制定された医制以降のことである。島崎謙治『日本の医療―制度と政策』(東京大学出版会)によれば、以下の通りである。
戦後、GHQは強硬に分業を進め、1951年にはいわゆる「医薬分業法」の制定にこぎつけたが、GHQの引き上げ後は医師会が巻き返し、1954年には議員立法により改正され、「医薬分業を建前としながらも、患者が希望した場合には医師は調剤できるなど例外的事由が多数認められることとなり、今日に至っている。(75ページ)」
そのような歴史的流れの医薬分業であるが、少し風向きが変わってきた。今回の診療報酬の改定では、外来での主治医機能を重視した改定が行われている。
地域包括診療料は、その算定要件が院内処方を原則としたものとなっている。「日経メディカル」が2014年2月20日に配信した『主治医報酬、「原則として院内処方」の衝撃』(http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/eye/201402/535136.html)では以下のように伝えている。
厚生労働省のホームページに掲載されている「平成26年2月12日版(未定稿)」の『平成26年度診療報酬改定の概要』(http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000037490.pdf)では、たしかに「当該患者に院外処方を行う場合は24時間開局薬局であること(37ページ)」とある。24時間開局している薬局は例外中の例外だ。地域包括診療料を算定する場合は院内処方になるだろう。
もともと、院外処方には「二度手間だ」「余計に金がかかる」といった批判が多い。体の不自由な患者の場合、院外薬局に行かせるのは忍びない。私は雨の日に高齢者に院外処方箋を渡すだけで申し訳なく思ってしまう。しかし、複数の病医院で診療を受けている場合、内服薬の統合管理は極めて重要な問題である。日経メディカルの記事はこう締めくくっている。
開業医も地域包括ケアで24時間対応が求められている。薬局も同様ということなのだろう。
医制は、「医師たる者は自ら薬を鬻(ひさ)ぐことを禁ず。医師は処方書を病家に付与し相当の診療料を受くべし」(41条)という医薬分業の規定を設けた。[中略]医薬分業は薬舗(薬局)の数が少なかった上、医師(開業医)の強い反発があったことから、定着しなかった。(33ページ)
戦後、GHQは強硬に分業を進め、1951年にはいわゆる「医薬分業法」の制定にこぎつけたが、GHQの引き上げ後は医師会が巻き返し、1954年には議員立法により改正され、「医薬分業を建前としながらも、患者が希望した場合には医師は調剤できるなど例外的事由が多数認められることとなり、今日に至っている。(75ページ)」
なお、医薬分業率(院外処方率)はこの当時は微々たるものであったが、「平成19年社会医療診療行為別調査」によれば、2007年には59.8%に達している。それを促した一番大きな要因は、薬価算定方式の見直しにより薬価差益が大幅に縮小したこと、処方箋料の引き上げなど診療報酬により院外処方の経済的誘導が図られたことによる。(75ページ)
そのような歴史的流れの医薬分業であるが、少し風向きが変わってきた。今回の診療報酬の改定では、外来での主治医機能を重視した改定が行われている。
外来医療で注目すべき点は、複数の慢性疾患を持つ患者への「主治医機能」を評価する項目を新設したことだ。「地域包括診療料」と「地域包括診療加算」の2つがある。高血圧、糖尿病、脂質異常症、認知症のうち2つ以上を有する患者に対し、服薬管理や健康管理を行ったり、介護保険の相談を受け付けることなどを算定要件に盛り込んだ。地域包括診療料は、許可病床数200床未満の病院と診療所を対象とした包括払いの点数で、1503点を月1回算定できる。地域包括診療加算は診療所が算定できるもので、1回につき20点。(「日経メディカル」『包括払いの「主治医報酬」は1503点に』http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/201402/535067.html)
地域包括診療料は、その算定要件が院内処方を原則としたものとなっている。「日経メディカル」が2014年2月20日に配信した『主治医報酬、「原則として院内処方」の衝撃』(http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/eye/201402/535136.html)では以下のように伝えている。
実は厚労省は当初、病院が地域包括診療料を算定する場合は、完全に院内処方に限定する姿勢を見せていた。答申に先立つ1月29日の中医協に提示した案では、算定要件を「当該患者について院内処方を行うこと」と規定し、院外処方を一切認めない方針だった。
だが、この案には薬剤師代表の中医協委員が異論を唱えたこともあり、最終的には病院が算定する場合は「24時間開局している薬局」への院外処方が認められることになった。
厚生労働省のホームページに掲載されている「平成26年2月12日版(未定稿)」の『平成26年度診療報酬改定の概要』(http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000037490.pdf)では、たしかに「当該患者に院外処方を行う場合は24時間開局薬局であること(37ページ)」とある。24時間開局している薬局は例外中の例外だ。地域包括診療料を算定する場合は院内処方になるだろう。
もともと、院外処方には「二度手間だ」「余計に金がかかる」といった批判が多い。体の不自由な患者の場合、院外薬局に行かせるのは忍びない。私は雨の日に高齢者に院外処方箋を渡すだけで申し訳なく思ってしまう。しかし、複数の病医院で診療を受けている場合、内服薬の統合管理は極めて重要な問題である。日経メディカルの記事はこう締めくくっている。
例外的にではあるが厚労省は、地域包括診療料について、24時間の開局・対応をしている薬局への院外処方を認めている。見方を変えればこのことは、薬局にその面での努力を促していると捉えることもできる。つまり厚労省は、24時間対応を行う薬局を選別して評価する方向に政策のかじを切ったわけだ。
そうした政策の変化に目を向けず、在宅への取り組みも放棄して、門前の医療機関から出てくる外来処方箋の応需のみに汲々とする薬局が早晩、厳しい状況に追い込まれることは間違いないだろう。
開業医も地域包括ケアで24時間対応が求められている。薬局も同様ということなのだろう。