顔写真が本のカバーに印刷してあることに気がつかず、『2100年の科学ライフ』の著者であるミチオ・カクの顔を見たいと思ってYouTubeにアクセスした。英語でのインタビューなので、聞き取れない部分も多かったが、オールバックにした長い白髪が印象的だった。いろいろ見たいと思ったのだが、10分の動画なら視聴に10分かかる。YouTubeには倍速再生の機能があるが、日本語ならともかく、英語では倍速再生で聞き取る自信がない(実際にやってみたが、やはり聞き取れる割合は低下する)。あれこれ見ていると、すぐに何十分も経過してしまう。時間が足りない身にとっては辛い。
その点、面白い動画を紹介してくれる記事や番組はありがたい。「日経ビジネスオンライン」に、「金曜動画ショー」という連載があり、ときどき見ている。紹介される動画は、すべて優れたものだ。ただし、動画をつぎつぎと紹介するための地の文は、いささかとってつけたような感じがあり、このブログでは1回しか取り上げたことがない。筆者の鶴野は「金曜動画ショーで紹介する動画選びもあって、平均で週100本以上の動画を見続けています」と書いている。動画を見ることが仕事の一部になっているのだろう。
2013年12月27日に配信された記事は『金曜動画アワード2013決定―必見動画を一挙公開』(http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20131226/257628/)と銘打ったもので、5本の動画を取り上げていたが、いずれもとても面白かった。だが、年が明けて、2014年1月10日に配信された『100本作って反応なし! お粗末 「子ども事故防止」サイト』(http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20140109/257989/)で紹介された動画は、昨年度ベスト5よりも群を抜いて面白かった。
標題で批判された1本は、経済産業省が所管する独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)が公開した、乳幼児の事故を防ぐために、保護者に向けて起きやすい事故の形態を紹介する動画だ。100種の形態を列挙しているが、表形式の文章、百歩譲ってもイラストで済む解説を、動画100個を使っておこなっている。イラストであればざっと見渡せるものが、動画であればいちいちクリックして、終了まで付き合わねばならない。100枚のイラストならじっくり見ても5分で見終わるが、10秒ほどの動画なので、動画の視聴だけで正味1000秒、17分ほどかかる。最悪のインタフェースだろう。いかにも「予算を使い切るために無駄な作業を発注したら偶然目立ってしまった」という感じだ。呆れてものが言えない。もう1本放医研のものも批判されているが、これら「啓発動画」に対する作品として鶴野が紹介する2作品は、文句なく優れていた。
1本目はニュージーランド交通省による、スピードの出し過ぎに注意を呼びかける動画である(http://www.youtube.com/watch?v=bvLaTupw-hk)。道路の合流部で、猛スピードで直進してくる自動車が、脇道から出てきた自動車に衝突しそうになる。そこで現実を離れ、時間は止まり、ふたりの運転者は車を降りて会話を始める。
「息子がいるんだ。ブレーキを踏んでくれ」
「済まない。スピードが出すぎている」
辛そうに別れてそれぞれの車に戻る運転者たちの切ない表情が心に残った。
2本目はタイの保険振興財団が制作した禁煙を促す啓発動画だ(http://www.youtube.com/watch?v=ygWEPOFL1k8)。日本語字幕がついている。
時間のあるときに見てほしい。鶴野は、啓発動画の重要なポイントは「それを見た人がどうすれば次の行動に移せるかという意識がきちんと反映されているかどうか」であると言う。
なお、鶴野は2013年4月の連載開始以来、合計106本のネット動画を紹介したそうだ。その一覧をStorifyという一種のデータ共有サービスに掲載しているが(http://storify.com/mame3/story-12)、私の環境では先に進むほど画面の表示が遅くなり、実用的でなかった。
その点、面白い動画を紹介してくれる記事や番組はありがたい。「日経ビジネスオンライン」に、「金曜動画ショー」という連載があり、ときどき見ている。紹介される動画は、すべて優れたものだ。ただし、動画をつぎつぎと紹介するための地の文は、いささかとってつけたような感じがあり、このブログでは1回しか取り上げたことがない。筆者の鶴野は「金曜動画ショーで紹介する動画選びもあって、平均で週100本以上の動画を見続けています」と書いている。動画を見ることが仕事の一部になっているのだろう。
2013年12月27日に配信された記事は『金曜動画アワード2013決定―必見動画を一挙公開』(http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20131226/257628/)と銘打ったもので、5本の動画を取り上げていたが、いずれもとても面白かった。だが、年が明けて、2014年1月10日に配信された『100本作って反応なし! お粗末 「子ども事故防止」サイト』(http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20140109/257989/)で紹介された動画は、昨年度ベスト5よりも群を抜いて面白かった。
標題で批判された1本は、経済産業省が所管する独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)が公開した、乳幼児の事故を防ぐために、保護者に向けて起きやすい事故の形態を紹介する動画だ。100種の形態を列挙しているが、表形式の文章、百歩譲ってもイラストで済む解説を、動画100個を使っておこなっている。イラストであればざっと見渡せるものが、動画であればいちいちクリックして、終了まで付き合わねばならない。100枚のイラストならじっくり見ても5分で見終わるが、10秒ほどの動画なので、動画の視聴だけで正味1000秒、17分ほどかかる。最悪のインタフェースだろう。いかにも「予算を使い切るために無駄な作業を発注したら偶然目立ってしまった」という感じだ。呆れてものが言えない。もう1本放医研のものも批判されているが、これら「啓発動画」に対する作品として鶴野が紹介する2作品は、文句なく優れていた。
1本目はニュージーランド交通省による、スピードの出し過ぎに注意を呼びかける動画である(http://www.youtube.com/watch?v=bvLaTupw-hk)。道路の合流部で、猛スピードで直進してくる自動車が、脇道から出てきた自動車に衝突しそうになる。そこで現実を離れ、時間は止まり、ふたりの運転者は車を降りて会話を始める。
「息子がいるんだ。ブレーキを踏んでくれ」
「済まない。スピードが出すぎている」
辛そうに別れてそれぞれの車に戻る運転者たちの切ない表情が心に残った。
2本目はタイの保険振興財団が制作した禁煙を促す啓発動画だ(http://www.youtube.com/watch?v=ygWEPOFL1k8)。日本語字幕がついている。
ストーリーはこうです。街でタバコを吸っている大人たちに、子どもがタバコを持って近づき、「火をください」と頼みます。タバコを吸っている大人たちは驚き、「体に悪いよ」「やめた方がいい」などと断ります。子どもは聞きます。「じゃあどうして、あなたは吸っているの?」そして、大人が答えに窮していると、手紙を渡して、子どもは去っていくのです。手紙にはこうあります。「あなたは私の体を心配してくれた。あなたにも自分の体を心配してほしい」その手紙を読んだ大人たちの困惑した表情が何とも言えません。そして、誰一人として、その手紙をその場で捨てたりしない。
時間のあるときに見てほしい。鶴野は、啓発動画の重要なポイントは「それを見た人がどうすれば次の行動に移せるかという意識がきちんと反映されているかどうか」であると言う。
見ればわかりますが、子役二人とカメラ数台で、編集も簡単なものですから、制作費が大きくかかるイメージは持たないでしょう。しっかり探せば、このように制作費をおさえて伝え方を工夫している啓発動画はいくらでも見つかります。
なお、鶴野は2013年4月の連載開始以来、合計106本のネット動画を紹介したそうだ。その一覧をStorifyという一種のデータ共有サービスに掲載しているが(http://storify.com/mame3/story-12)、私の環境では先に進むほど画面の表示が遅くなり、実用的でなかった。