著者がデザインの持つ意味について開眼させられた興味深いエピソードが紹介されている。彼は大学在学中からデザインの仕事をしていたので、卒業後の就職面接でも自信満々だった。最終の四次面接で面接官の副社長から「私が新しいプロジェクトを始めて、あなたに発注しようかと検討しているとします。あなたなら最初に何を尋ねますか?」と訊かれたときも「印刷物ですかウェブサイトですか? カラーは使いますか? それとも白黒ですか?……」などとスラスラと答えた。

「それでは困りますね。そんなことは問題ではありません、一番最初に尋ねるべきは『何を伝えたいのか』でしょう」というのが副社長の答えでした。
これには参りました。沈黙です。無知をさらけ出してしまいました。(4ページ)

この副社長はスグレモノである。こんな副社長の下で働くことができたら、きっと大きく成長するだろう。

会議の円滑進行の要素としては人付き合いも非常に重要だ。多くの人と仲良くなることで、S会議の進行は円滑になる。この本では、そのために守るべきことや推奨されることが数多く紹介されている。何よりも誠実であることが重要なのだが、明るいこと、ユーモアのセンスを持つこともプラスに働く。

著者自身もユーモアに溢れた人である。営業もプレゼンテーションも、彼ならば成功するだろうと感じる。この本の各所に彼のユーモアが散りばめられているが、「まえがき」からユーモア全開だ。謝辞はこのような一節で始まる。

まずは「言わずと知れたこと」から片づけてしまいましょう。謝辞を書くなら「家族に感謝」も忘れないでくれるとうれしいな、と妻に言われているものですから。5人の子供たちも含めて個性派ぞろいの私の家族は、この本を執筆中、しじゅう睡眠不足の私に対して寛大にも家事育児を一切合切免除してくれました。ただし書き終えた今は、「シャワーを浴びる間だけでもチビを抱っこしててくんない?」という声が。もちろん喜んで。謝辞を書いたらすぐ行くよ。(xiiiページ「まえがき」)

巻末の著者紹介でも茶目っ気を出している。彼の天賦の才なのだろう。