また、小野沢滋は「医者の出す薬は効くのか」という文も書いている(104ページ)。高齢者の多剤服用はほぼ社会問題化していると言っても良い。雑誌「日経メディカル」の4月号も特集「その症状、薬が原因では?」として、高齢者への多剤投薬を扱っている。厚生労働省もすでに2016年の診療報酬改定で「多剤投薬の患者の減薬を伴う指導の評価」として、入院時に6種類以上の内服薬を処方されていたのを2種類以上減少させた場合に点数を与えることとした。
特に複数の疾患を有する高齢者に、多種類の服薬を要することがあることから、薬剤に起因する有害事象の防止を図るとともに、服薬アドヒアランスを改善するために、保険医療機関において、多種類の服薬を行っている患者の処方薬剤を総合的に調整する取組を行い、処方薬剤数が減少した場合について評価する。(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000112306.pdf)

この記事では複数の問題が論じられている。問題としては、効果の不明な薬剤が投薬されていること、相互作用が不明なまま投与されていること、副作用が適切に把握・評価されていないこと、効果が適切に評価されず漫然と継続されていることなどが挙げられる。日経メディカルでは薬剤を投与した場合の副作用を新たな疾患あるいは症状と勘違いしてさらに別の薬が投与される例を複数掲載している。

私が特に問題とするのは効果の不明な薬剤が投与されることだ。患者の訴えが急性症状である場合、効果発現に時間のかかる薬剤の投与は、投与の目的が曖昧である。たとえば鼻汁・鼻閉に消炎酵素剤を処方したり、めまいにビタミンB12製剤を処方したりするのがこれに当たる。いずれも効果発現に早くても数日かかるもので、短時日で改善する可能性がある鼻症状やめまいに投与するのは不適当だ。

医師は「薬を出さないと患者が納得しないので」と言い訳することがあるが、すべての疾患に薬があるという幻想を振りまいてきたのは、他ならぬ医師自身ではなかったのか。
題名のうち、連番を間違えていたので修正しました。(4/29)