私は臨床研修指導医講習会にタスクフォース(世話係)として参加することが年1回ほどある。その講習会では、研修医を指導する立場の参加者に初期臨床研修プログラム(のごく一部)の作成を体験してもらう。

まず地域のニーズを洗い出して、どのような医師を育成すべきか、テーマを選定する。テーマの中で、時間内にプログラムが作成できそうな分野を選択し、一般目標を設定する。一般目標とは「何のために何をどうするのか」といった大づかみな方向性を示す目標である。さらにそれを個別の行動目標に落としていく。行動目標とは、具体的な達成目標で、評価可能であることが望まれる。「~を述べることができる」「~を実施できる」「~を作成できる」「~に配慮できる」などという文で示される。さらに、行動目標を達成するための方略と、達成の状況を判定するための評価計画を立案してもらう。

ここでは、プログラムの各項目の連鎖関係が重要になる。複数ある行動目標の全体を達成することで一般目標が達成できなければならない。また方略は目標達成に資するものでなければならず、評価計画も達成度をきちんと把握できるものでなければならない。このような連鎖関係がしっかりしていなければ、いくら教えても予定した成果は上がらない。

このプログラム作成の過程は、政策の立案、実施、検証の過程とまったく同じだ。立森は、政策を立案する際にいちばん大切なのがセオリー評価だと力説していたが、プログラム作成の際に私たちが気をつけるのは、参加者の作成するプログラムが、まさにこのセオリー評価に耐えうるものかどうかということなのだ。

立森の講演を聞き、政策の立案過程と研修プログラムの作成過程がきわめて似たものであることがわかったので、政策の評価の能力も向上したと思えるし、研修プログラムの作成援助もより論理的に行なえるようになったのではないかと思う。