ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンで、被接種者が機序不明の疼痛を発症する事例が相次いで報道され、厚生労働省がHPVワクチンの積極的勧奨を中止してから今月で2年を迎えた。

ペンシルベニア大学のスタンレー・プロトキン氏は、6月17日にメディカル・トリビューン社の報道部に「HPVワクチンが使われなければ,日本の女性と男性に何千例ものがんが発生するでしょう」と勧奨中止への懸念を示す書簡を送ったという(http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1506/1506061.html)。

たしかにそのとおりで、こもまま進めば、日本での子宮頸癌の発症率は将来上昇するだろう。疫学的に証明されており、これは予言や推測ではなく、統計学的な「事実」なのだ。統計学的に高い確率をもって起こると判断される事柄は、未来に起こる「事実」とみなしてよい。

しかし、副作用に関しては、ことの次第はよくわからない。一部の医師の売名行為のような気もするし、患者の心因反応のような気もする。しかし、私の勤務先の施設の小児科にはHPVワクチン接種後に疼痛のために体調を崩し、現在も学校に満足に通えないでいる子どもがいる。また、私の娘は、ワクチン接種からすでに3年ほど経過しているにもかかわらず、接種部位がときどき赤く腫れ上がり、痒みを訴えている。このような事実を見ると、副作用としての全身性疼痛も否定できない。たしかに海外からの報告は少ないようだ。だが、それをもって日本人にも少ないと言えないことは、厚労省自体が認めていることだ。

関係者は皆、問題が解明されるのを祈っていることだろう。問題の解明の近道は人体実験である。もちろん昔のような人体実験はできない。現代では犯罪である。しかし、被験者が同意すれば可能となる。希望者には同意の上で無料で接種し、副作用が起こったときには国が手厚い保障をするという方法もある。真実の究明のために攻める姿勢も必要なのではないか。当然のことながら、希望者がまったくいなければ、そこで考え直さねばならないが。