日経ヘルスケアに裴英洙(はい・えいしゅ)が連載している「総合経営医Dr.ハイの院長、ちょっと待って!」の2015年4月号「その採用、ちょっと待って!」を読んで感じたことを書きたい。裴は金沢大学を卒業後、外科医、病理医を経てMBAを取得し、現在は医療経営コンサルタントを営んでいる。

職員の採用は難しい。一番良いのはよく知っている知り合いを頼むことだが、一般にはそうはいかない。この記事は、医院や病院が職員を採用するときのアドバイスを記したものだ。筆者は公共職業安定所(ハローワーク)、専門職バンク(ナースバンクなど)、求人誌、折り込みチラシ、知人紹介と列挙した後で、知人紹介からトライすることを勧めている。費用がかからず、信頼がおけることが利点だが、職員満足度のテストにもなると述べる。
自院の職場を知人に勧めたいかどうかは、究極の職員満足度テストなのだ。職員が誇りに思っている職場なら紹介したいと考えるだろうが、「友人にはこの職場を紹介できない」と思えば紹介には結びつかず、それは経営者への不満を伝える無言のメッセージとも取れる。採用側は真摯にそのことを受け止めてほしい。

また筆者は面接のコツとして以下の3点を挙げる。
1. 1人勝負・1回勝負は避ける
2. 人材要件を明確にする
3. 技能面だけでなく人間面を知る

ただし、私が勤務してきた経験では、複数回の面接をおこなうのは難しかった。お互いの時間の調整もさることながら、何回も面接に来てもらうほど競争率が高くないことが多いのだ。現在の勤務先でも「1回勝負」の面接が多い。人材要件により面接者を選別することも困難なことが多く、「とにかく(資格を持った)人がほしい」となってしまう傾向がある。これは勤務先の管理職も反省しており、きちんとした選択を心がけたいと言っている。

筆者は、面接を補う手段として、履歴書の一部(彼は「志望動機」を例に挙げている)を手書きで書くように指定して字を見る方法、別の部屋で課題をおこなうよう指示してその際の立ち居振る舞いや物品の扱い方を見る方法などを提案している。他にも、面接会場への案内役にそれとなく会話をさせ、人となりを探る方法などもあるが、私の経験では一番役に立つのが集団討論だ。協調性、積極性、論理性、明るさなどの要素が判断できる。

以前、別の勤務先で研修医の採用を担当していたことがある。その際は「無人島に行かねばならないとき1つだけ持って行けるとしたら何を持っていくか」などの課題を出して集団討論させた。採用した研修医の病棟での評判が悪く困ったことがあったが、面接を担当した私たちは「いや、彼は良いものを持っている。いずれスタッフはわかってくれるはず」と静観した。しばらく経って彼の人気は上がり、私たちは安堵するとともに自分たちの人を見る目に自信を持ったものだ。