阿部和也の人生のまとめブログ

私(阿部和也)がこれまで学んだとこ、考えたことなどをまとめていきます。読んだ本や記事をきっかけにしていることが多いのですが、読書日記ではありません。

ブログを休止することにしました。私自身について真剣に振り返るべき人生の岐路に立ったのです。このブログを私の生存確認としてお使いいただいていた方々もいるだろうと思いますが、病気になったわけでも死んだわけでもないのでご安心ください。ただ、すべてのエネルギーを自分自身の振り返りに費やすべき状態となり、ブログにエネルギーを割けなくなったのだとご理解ください。

これまでお読みいただきありがとうございました。いずれ再開させていただくつもりなので、その際はよろしくお願いいたします。

次に取り上げられているのは「すべてはあらかじめ決まっている」と思い込む「宿命本能」だ。著者は次のような例を紹介している。著者は、ある講演で、アフリカの発展について実際のデータに基づいて説明してほしいと頼まれた。アフリカが目覚ましい発展を成し遂げていることを投資家に納得させるための企画だった。「聴衆は目を丸くして熱心に耳を傾け、いい質問をしてくれた」という。ところがである。

講演が終わってノートPCをしまっていると、薄いチェックの三つ揃いを着た白髪まじりの男性が舞台のほうにゆっくりと歩いてきて、優しく笑いかけながらこう言った。「先生の数字も見せてもらったし、お話しも聞きましたけどね、アフリカはありゃだめですよ。軍の仕事でナイジェリアにいたからわかります。ほら、文化があれだから。近代的な社会なんてつくれっこありません。変われませんよ。絶対に」(Kindle版 位置2540)

人類は、昔からあまり変化のない環境で暮らしてきた。だからこの「変われない」という思い込みも、進化の過程では役に立ったにちがいないと著者は想像する。

でもいまの時代、物事が変わらないと思い込み、新しい知識を取り入れることを拒めば、社会の劇的な変化が見えなくなってしまう。(Kindle版 位置2561)

ここで挙げられている「宿命本能」は他の「直線本能」「パターン化本能」「分断本能」などと密接に結びつき、関連しあって人の目を曇らせている。

だが、現在Covid-19パンデミックで社会が激変するのを目にしている私たちは、これらの本能の影響を受けにくいのではないかと思う。感染状況を見るのに直線本能は役に立たないし、パターン化や分断ができるほどの固定したデータもない。ただし、パンデミック以外のものを見たり考えたりするときに本能に任せていたのでは、何も学んだことにならない。パンデミックから学んだことを周りのすべてに生かすことが必要だろう。

この章には「岩はどう動く?」というタイトルのセクションがある。私たちの世界は岩のように見えてもそうではなく動くのだということなのだが、このタイトルでひとつSFを思い出した。宇宙から飛来した隕石の中に石像が見つかったという物語だ。石像は厳重に保管されたが、何年も経って石像を再計測したところ、姿勢が変わっていた。つまりそれは石像ではなく生物だったというオチだ。

日常生活にパターン化は必要だ。判断を早め、対処を早める。だから人間はその能力を発達させてきたのだ。ロスリングは、「大事なのは、間違った分類に気づき、より適切な分類に置き換えることだ」という。認識を切り替えるにはたくさん旅をすると良いとして、公衆衛生を学ぶ学生をレベル1からレベル3の国に連れていく話を書いているが、私はもう旅をたくさんできる歳ではない。海外の情報をバランスよく取り入れ、自分のパターン化に偏りがないかどうか意識的に注意するしかないだろう。

彼が学生を引き連れてインドのケーララ州にある公立病院を訪れたときの話が印象的だった。

公立病院の壁はむき出しで、空調もなく、60人もの患者がひとつの部屋にいる。それを見た学生はひそひそと、この病院にも患者さんにも、さぞおカネがないんだろうとささやき合う。それを聞いたわたしは、いやいや本当に貧しい人たちは病院に来ることすらできないんだよと説明する。(Kindle版 位置2288)

病院の壁を塗らないのには別の理由がある。職員の説明によれば、「病院の壁がぼろぼろだと金持ちの患者は敬遠するので、医師や看護師が時間をかけて高額な診療を行う必要がなくなる」からなのだそうだ。おかげで限られた人的資源を効率よく回すことができる。

同じ州にある「近代的で美しい8階建ての私立病院」を訪ねた際、学生のひとりが大怪我をしそうになった(著者は「危うく命を落としそうになった」としている)。ある学生が遅刻をし、一行はロビーでその学生を待った。15分待っても来ないのであきらめ、集中治療室へ向かうため大型のエレベータに乗り込んだ。そのとき、例の学生がロビーに駆け込んでくるのが見えた。

「急いで!」エレベーターの中にいた友達が大声を出し、閉まりかけたドアに足を挟んだ。それからはあっという間だった。エレベーターのドアがその学生の足を挟んだまま、どんどん閉まっていく。学生は大声でわめき出す。このままドアが足にのめり込み、足が粉々に砕けてしまうのではないかと思った瞬間、わたしたちを迎えてくれた責任者がパッと前に出てエレベーターの緊急ボタンを押した。(Kindle版 位置2309)

ドアに挟まり防止センサーなど付いていないのだ。レベル4世界に慣れてしまうと、レベル1から3の国に行ったときに思わぬ危険に遭遇することになる。

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